海老せんべい

寒いけれど日が長くなった。

今日は父の命日だ。

26年前も同じようによく晴れて、

今日よりも乾いた、冷たい風が吹いていた。

 

今日はお寺の幼稚園にレッスンと練習に行ったので、

少しの時間手を合わせる。

常々教会やお寺でオルガンを弾かせていただいて、

祈る時間が与えられるのは、

幸運なことだと思う。

 

練習の合間にふと後ろを見ると、

お菓子と温かい生姜が入った甘酒が

そっと置かれていた。

身体の中も心も温まった。

ありがたや。

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病室に集まった一同が息を呑んで見つめる中で
父が書いた震える文字は、
はたして「せんべい食べたい」だった。

さいごまでふざけているんだか

本気なんだかわからない人だった。

 

父が好きだった、

高級ではない駄菓子よりの海老せんべいを買って帰って、
それをかじりながらニュースを見ている。
だれかの大切な人の命を、
人の手で奪うことが決してあってはならない、

と今日は特に強く思う。