一昨年の夏以来2年半ぶり。
春は街中がオレンジの花の香りに包まれるマルチェーナ。
朝から晩まで弾いてくたくたになっても、
翌朝朝目覚めるととまた早く弾きたくて
うずうずするんだな。
この楽器に会いたくて、
はるばるここまでやってきた。
鍵盤は遠くて、どうにもバランスが取れないので、
弾くのは容易ではないし、そのうちあちこち痛くなってくる。
スペインの師、アンドレスのアドバイスどおり、
かかとを椅子の止まり木に乗せて、両膝をがばっと開いて、
足を固定させて座ることにしたらずいぶん弾くのが楽になった。
それにしてもすごいかっこうだけど。
鍵盤は何かの動物の骨で作られているのかな。
指のあたるところが丸く削れて、
そのへこみにそわせて弾くのがなんとも心地良い。
聖歌隊席に入る古い鉄の扉にステンドグラスの影が映る。
静かで神秘的な、何にも変えがたい時間。