卵焼き器

去年の秋、合羽橋を通りかかったときに、

銅の卵焼き器に出会った。

以前からあこがれがあったが、

扱いが難しそうだし、高いだろうなあと思っていたら、

テフロン加工のものと並んで、

いくらも変わらない金額で

売られている。

聞けば、扱いもそんなに大変ではなさそう。

思い切って、銅のものに決めた。

 

最初の2,3回は、くっついたり

火加減が難しかったりで、

あまりうまく焼けなかったけれど

油が馴染んできて、すこしずつ扱いにも慣れて、

今ではテフロンより

手早く焼けるようになった。

 

わたしの最初の卵焼き器は、

父方の祖母が遺した

テフロン加工のもので、

大阪の祖母の家を整理しているときに、

おじとおばが「なんでも持っていっていいよ。」

と言って選ばせてくれたものの一つ。

 

そのほかに祖母から引き継いだのは、

たとえばキャンディみたいな色合いの、

ガラス製のマドラー。

 

探したら、夏に撮った写真がありました。

この他に、水色とグリーンも。

こどもの頃、夏にこれが冷たい飲み物と一緒に出てきて、

氷と混ぜていい音をさせるのが、

嬉しかったものだ。

 

それからグレープフルーツ専用の

ぎざぎざ付きスプーン、

小さな一輪挿し、

荷物はたいして入らない、

きゃしゃなハンドバックなど。

 

どれも、なくても特に困らないけれど、

あるとちょっと楽しいものばかり。

この祖母は、そういうものを

大事にしていたのだった。

 

卵焼き器も祖母が遺してくれなかったら、

きっと自分で買うことは

なかっただろうな、と思う。

 

そういえばこの前母がわたしの家に来たときに、

「あなたは敏子さん(祖母の名前)

に似たのねえ。」

と、あちこちに並んでいるがらくたや、

持っている服の色合いを見て、

何度か言っていたっけ。