ホサカのお母さんのこと

いつもおもしろエピソードの絶えない山梨の祖母、

“ホサカのお母さん”に、ありがとうを言いに行ってきた。

 

祖母は40台前半でおばあちゃんになったので

「おばあちゃん」と呼ばれないように、

「こっちがママで、私はお母さんよ。」

と私に教え込んだ。

 

こどもの頃「若い頃はサーカスで歌っていて、

それを見に来たおじいちゃんが、一目惚れをして結婚したのよ。」

と真面目な顔でいうので、

すっかり信じ切ったわたしは、

長いあいだ尊敬の眼差しで見ていた。

 

電話をかけてきては、

今日どんなに美味しいものを食べて、

それはどんなふうに作るのかを詳細に、40分も!かかって

教えてくれたりもした。

 

歳を重ねてもとんかつ、天ぷら、うなぎが大好きだった。

もう一度、揚げたての唐揚げを思う存分食べさせたかったなあ。

 

時にうっとおしいほどの愛情で包んでくれたことは、

これからもいろんな場面で強くわたしを支え、守ってくれるだろう。

 

小雪がちらついた薄曇りの今日は、

山の端が霞んで天と地の境目がなくなったように見えた。

 

な〜んて、畑仕事の合間に木の下に寝転んで空を見上げて、

時々詩人になっていたお母さんのまねをしてみたりしてね。

お母さんが大事にしていた黒猫にゃーちゃんは

わかっているのかいないのか、

すり寄ってきては、にゃ、と短く鳴いた。