つゆ日記

2年ぶりにつゆが来た。

2年前のつゆ。

オルガンの上で置物になるのが

お気に入りのよう。

じっと人の目を見る、不思議な子猫だった。

彼がこどもの頃に初めて遊びにきた時に、
わたしが猫アレルギーになって熱を出したので、
本格的に預かる前にお試しでまずは2泊。
大人になったらすっかり警戒心が強くなっていて、
やっと慣れてきて仲良くなった最後の夜、
足元に寄ってきたのに気がつかず、
振り向きざまに踏んづけた上にひっくりかえってしまった。
びっくりしたつゆはものすごい声で鳴き、
私の足の裏を盛大にガリっとやって、
高いところに隠れてしまった。
ウーっと唸りながらおびえているので、
ごめんねごめんねわたしが悪かった、
と足の裏から血を流しながら
ムツゴロウさんのように謝り続けた。
それから2週間。
再びうちにやってきたが、そう簡単に信用は取り戻せない。
いつも遠くからじっとわたしのことを見張っていて、
触ろうとするとシャーっと怒られる。

ちっちゃいことにこだわっちゃってさ、
いいかげんもう許してよ。
と言ってもだめ。
お試し期間より時間をかけて
少しずつ距離を縮め、
2日目の朝、目覚めると顔の横にいたときの嬉しかったことよ。
そのまま抱きついて、なでまわしたかったけれど、
また怒るかもしれないので、
まずは、ぐっと我慢して知らん顔。
ああ、辛かった。

この猫には面白い習性があって、
ごはんを食べるときに、横で見ていてくれ、と催促しにくる。
途中でその場を離れると、
食べるのをやめて、何度でも呼びに来るのだ。
見ているだけでなく、
背中を撫でてやるとなお機嫌がいい。
気配を消すのが得意で、運動神経抜群。
棚の上のガラクタをひとつも倒さずに歩くのには驚いた。
昨日の朝、迎えにきた飼い主に
聞いたことのない甘えた声で鳴いて、
自分の家に帰っていった。
夜になってソファの上でくつろいでいると、
足に触れたクッションがつゆじゃないかと思うくらいには、
もう寂しくなっている。
またおいで、つゆ。