先週、4月のはじめに、3日間岐阜のサラマンカホールをお借りして
スペイン講座のみなさんとスペインの作品を勉強してきた。
ずいぶん前から岐阜のオルガニストの方に、
サラマンカホールには「オルガン技術習熟のための利用」という、
通常よりずっと安価に借りられる制度があることを教えていただいて、
その機会をうかがっていた。
日程を調べてみると、
新年度が始まる4月の1週目はホールが空いていて、
このスペインの様式を取り入れたオルガンで勉強することが実現した。
オルガン製作家の辻宏さんが1994年に作った
このオルガンとホールは、こんな由来がある。
(サラマンカホールホームページより)
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当ホールは、岐阜県が1994年に開場したコンサートホールです。
その名は、スペインのサラマンカ(Salamanca)市に由来しています。
サラマンカ市は、ポルトガルとの国境に近くにある
カスティーリャ・イ・レオン州サラマンカ県の県都で、
現存するスペイン最古の大学ともいわれるサラマンカ大学のある街であり、
旧市街全体が世界遺産に登録されている歴史的な都市です。
市中心部にあるサラマンカ大聖堂には、「鳴らずのオルガン」と呼ばれていた
ルネサンス期の古いパイプオルガンがありました。
そのオルガンの修復を岐阜県白川町の辻宏氏が申し出て、
その事業に岐阜県も協力をしました。
オルガンは8ヶ月かかってよみがえり、サラマンカ市民に感動を与えました。
6年後、辻氏がサラマンカホールのために
大聖堂オルガンの特徴をとり入れたパイプオルガンを建造したのです。
このホールがサラマンカの名をいただいていることは、
スペインと日本の友好の証でもあるのです。
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2018年に、Avilaのオルガニストで友達のハビエル・ロペス夫妻に
サラマンカに連れて行ってもらって、
幸運にもカテドラルにあるいくつかのオルガンと、
辻さんが修復した楽器を弾かせていただくチャンスを得た。
いつも練習させていただいている聖パウロ教会の音色を思い出して、
「わっ、辻さんの音がする」と感激しながら
サラマンカと祐天寺の間を行ったり来たりするような、
不思議な気持ちになったのだった。
司祭が演奏台までいらして話をした。
「知ってる?このオルガンは日本人が修復したことを。」
「もちろんです!
私は彼の作った素晴らしいオルガンがある教会の
すぐそばに住んでいます。」
「何か日本の曲を弾いてよ。」とおっしゃって、
しばらく演奏を聴いてくださった。
後でカテドラルのオルガニストが
「司祭は演奏台に上がってきたことなんか僕が知る限り一度もないんだ。
ミネコが日本から来たオルガニストだからだよ。」
と、興奮気味に教えてくれた。
さてところは岐阜に戻って…
この頭のすぐ上でけたたましく歌う水平トランペット管の響きは
日本にある、他のどのオルガンでも体験できない。
ちょっとハスキーなフラウタード(細いプリンシパル管)の音色は、
ストップ一本だけでしばらく弾いていたかった。
一同すっかり嬉しくなって、もう夢中。
中には生まれて初めてのトランペットの音が耳に残って、
興奮してよく眠れなかった、という面々も。
鍵盤のすぐ上からは、こんな天使が見守ってくれている。