Marchena,España 2017年春

一昨年の夏以来2年半ぶり。

春は街中がオレンジの花の香りに包まれるマルチェーナ。

朝から晩まで弾いてくたくたになっても、

翌朝朝目覚めるととまた早く弾きたくて

うずうずするんだな。

この楽器に会いたくて、

はるばるここまでやってきた。


イスはぐらぐら、演奏台は狭くて、

鍵盤は遠くて、どうにもバランスが取れないので、

弾くのは容易ではないし、そのうちあちこち痛くなってくる。

スペインの師、アンドレスのアドバイスどおり、

かかとを椅子の止まり木に乗せて、両膝をがばっと開いて、

足を固定させて座ることにしたらずいぶん弾くのが楽になった。

それにしてもすごいかっこうだけど。

鍵盤は何かの動物の骨で作られているのかな。

指のあたるところが丸く削れて、

そのへこみにそわせて弾くのがなんとも心地良い。

聖歌隊席に入る古い鉄の扉にステンドグラスの影が映る。

静かで神秘的な、何にも変えがたい時間。