長楽寺での2日間 ぶんぶんのことなど

2月に久しぶりにうかがった、

浜松の長楽寺での2日間の様子をご報告。

 

室町時代からの山門。

 

ご本尊の馬頭観音。

邪念にまみれたわたしには

吹き飛ばされそうな迫力で、

ちょっと怖い。

 

一緒に行った早島万紀子先生はさすが!

美男子よねえ、とおっしゃっていた。

 

客殿では仏像の展示も。

 

お茶室から望む、

小堀遠州作と伝えられる満天星(どうだんつつじ)の庭。

ここから見る空はいつも格別。

 

今回は合計5台のオルガンを

黒田尚子さん、早島万紀子先生と合奏した。

手前3台はベビーオルガンと呼ばれる、

ストップもない小さな楽器。

 

中でも一番小さいオルガンは、

尚子さんが車で藤沢から運んできた。

お友達のおばあさんが宣教師からもらったという、

こんなふうに折りたたんで持ち運べるもの。

この近くにお住まいで、

お寺のオルガンの面倒も見てくださっている、

リードオルガン修復技術者の和久井真人さんの手により

息を吹き返したこの楽器の音色はつつましやかで、

かつ細かい表現ができる名器。

 

こちらは長楽寺のベビーちゃん。

学習用に音名、階名が書いてある。

ペダルの模様がいい。

 

前回来た時までは、

近くで蜂を育ててはちみつを作っている

「ぶんぶん」こと吉武さんが、

(お寺の真譽さんはニックネームをつける名人なのだ)

和久井さんを訪ねてオルガンのことを教わって、

コンサートがある時には

いつも楽器を整えてくれていた。

「なおせるか、わかんないよ〜」

とか言いながら。

 

ある時リハーサルが長引いて、

オルガンの調整に来てくれたのに

ずいぶん待たせてしまったことがある。

すっかり日が暮れてあたりは真っ暗、

「遅くなってしまってごめんなさい!」

と詫びると、

「何言ってるの、

オルガンを聴けるのが楽しみで来てるんじゃない。

こんなに幸せな時間はないよ。ねえ。」

と、駆けつけてくれた和久井さんにも同意を求め、

顔をくしゃっと崩して笑った。

あの日の夕焼けや少しずつ暗くなって

色が変わっていく空、

蚊取り線香の匂い、

オルガンの音色…

…忘れられない。

 

ぶんぶんは本当に残念なことに、

2020年に亡くなった。

 

今回はコンサート前に鳴りっぱなしになった

鍵盤をうまくなおせず、

仕方なくリードを抜いて

どうにか音が出ないようにするのが精一杯で、

改めてぶんぶんの不在を痛感した。

 

お天気雨ならぬ、

お天気雪を降らせた雲の向こうにも

音が届いていることを、ただ願うばかりだ。